TOP技術委員会活動記録>'第4回技術検証会 更新: 11.6.6

4回技術検証会・報告書

                                 大阪府山岳連盟 

                                  技術委員会

検証テーマ  流動分散と固定分散システムの比較。

実施日時   201043日(土)

実施場所   百丈岩 やぐら

参加者    11名

 

アルパイン・クライミングで使用する確保システムとして、複数の支点を使った流動分散システムは広く一般的に用いられている。しかしながらその弱点として一方の支点(ハーケン・ボルト等)が破断した場合、残った支点に大きな荷重がかかることが指摘されており、その弱点を解消する一つの方法としてスリングを結ぶ固定分散システムがある。果たして固定分散システムは流動分散システムより衝撃荷重が少なく安全なのであろうか?先に発表されている大阪府勤労者山岳連盟技術委員会:谷関氏(以下大阪労山技術委員会:谷関氏)の報告はこれに疑問を抱いたものであり、我々もこの疑問を解消すべく検証を実施した。

 

 

検証条件

  ・落下する重りは69kgの砂袋を使用。

  ・確保システムと重りを、メインロープ(9mmナイロンロープ・長さ1m)で結ぶ。

    ・メインロープはテスト2回毎に交換する。

  ・メインロープの両端の結び方は全て西山結び(ワイヤー南京)にて結束。

  ・落下率-1(1m/1m)  重りを確保システム末端の位置から落下させる。

・スリングは全てBD製ダイニーマスリング60cm、120cm平型を使用。

・破断用ロープとして、3mmのビニロン紐(破断荷重約60kg)を二重にし、ダブル

 フィッシャーマンズノットにて結ぶ。

・同じ検証を同じ条件下で二度実施する。

 

   

別紙比較表の見方

 

・NOの左数字の同じものは、同じテスト方法を表す。

・NOの右数字はテストの順番を表す。

:1-1  1の方法の1回目のテスト。                                    

 1-2  1の方法の2回目のテスト。

 

・Aの数値。

      A支点の破断用ビニロン紐が切れた時の数値。

・Bの数値。

      A支点の破断用ビニロン紐が切れた時のB支点の数値。

・A破断後B最大値。

      A支点が破断し残ったB支点にかかった最大数値。

 

 

結果と考察

 

 比較表(別紙)の1-1と1-2は120cmのソウンスリングを使用した同じテストですが、最初に実施した1-1と2回目に実施した1-2ではB支点(破断しなかった支点)の数値が429kgと504kgというように1-2の方が高くなっている。

これはメインロープを交換しなかったため、1回目のテスト時にメインロープが荷重により伸長してしまい、2回目のテスト時はメインロープの伸長率が低くなっていたと考察される。

同条件で実施したつもりであったが、伸長率が違うため2度のテスト結果が違うということになってしまった。(以後のテストでも2回目の方が高い結果であった)

 

(テスト1回毎にメインロープを交換するか、ワイヤー等を使用しなければ、同じ

条件下のテストにならない。)

 

 

 

 

上記のことを踏まえ「流動分散」と「固定分散」の比較対象となるのは下表の通りとなる。

 

 テストNO

流動分散:固定分散

使用スリング

BD製ダイニーマ・ソウンスリング 平型

  最大荷重(B支点)

流動分散:固定分散

11 : 41

12mm × 120cm 

429kg 458kg

12 : 42

12mm × 120cm 

504kg 550kg

31 : 51

12mm ×  60kgp 

372kg 384kg

32 : 52

    12mm ×  60kg 

412kg 479kg

 

上表の数値を見ると総体的に「流動分散」の方が、最大荷重が全て低くなっている。今までの考えでは「固定分散」の方が低く安全であると考えられていたが、上表の結果だけを見ると反対の結果が出たのである。

なぜだろうか?

最初の衝撃で片側の支点が破壊され、パワーポイントが落下する間にメインロープが収縮し、再度荷重が掛かる時にメインロープが再度伸びることで衝撃を吸収したものと考察される。それに加えてシステムのスリングの摩擦による吸収も考察され、その結果今回の条件下のテストでは、「流動分散」の方が、支点にかかる荷重最大値が低くなるという結果となったのである。しかし実験数が絶対的に少ないため今回の結果については仮定の域を出ないと言わねばならない。

カラビナのセットの仕方(上下方向)及び使用する用具(スリング・カラビナ・他)や検証条件(結び目の滑り・破断荷重値・落下率・重り重量・他)によっても、数値は変わることが予想されるので、上記の結果については、あくまで参考としたい。

 

前回実施した検証会(211129日)では、下記のような結果がでている。

  *検証条件

・落下する重り:60kg    ・破断用紐:約10kgで破断

・落 下 率    2                                

・重りとシステムを直接繋ぐ(メインロープは使用しない)

 

 

使用スリング

1.2 BD製ダイニーマ・ソウンスリング 平型

3   ナイロンテープスリング 平型

      最大荷重

流動分散   : 固定分散

12mm× 60cm 

 757kg  : 測定できず

12mm×120cm 

  1,024kg  : 740kg

20mm×250cm 

 957kg  : 779kg

 

 

 

この検証では一つの条件で一度しか実施していないが、流動分散よりも固定分散の方が低い数値となっている。

メインロープを使用していないので衝撃を吸収するものが無く、ダイレクトに支点に衝撃荷重が掛かったと考察される。

 

他の検証

 

NO2  

「流動分散」でA・B支点共破断しないケースを想定。

     ===予想通りどちらの支点にもほぼ均等に、低い荷重数値の結果であった。

 

NO6-1・6-2

     「固定分散」で引かれる方向が移動し、片一方のスリングにたるみが発生し、

最初の衝撃が片一方にかかったケースを想定。

 

NO7-1・7-2

        「独立分散」 2本のスリングでそれぞれの支点にセットするも、引かれる

方向が移動し、片一方のスリングにたるみが発生し、最初の衝撃が片一方にかかったケースを想定。

===5-1の「固定分散」と比較すると数値的には低くなっている。

    長さを調整するための結び目が滑ってショックを吸収し、数値が低く 

なったと推察される。

 

 NO8-1・8-2

         「固定分散」の変形。オーバーハンド・ノットでスリングを縛る代わりに、 

         60cmソウンスリングで縛る方法。

                         ===縛る力が弱かったのか、荷重がかかったら縛り目にずれが起こり、ス

リングが溶解していた。しかし縛り目にずれが発生したためショック

が吸収され、最大数値は低くなったと推察される。

 

 NO9(番外)

      メインロープ(9mm)でインラインフィギュアエイトノットを作る。

                ===メインロープがショックを吸収、今回のテストでは一番低い数値が出 

た。ナイロンロープの伸長率から見て、予想通りの結果であった。

 

 

 

最後に

「流動分散」と「固定分散」の比較検証については、先に述べたようにすでに発表されており、それを参考にさせて頂きました。そしてその時と違う条件では結果がどうなるのか?というような疑問を自分たちで実際に検証してみたのが上記の内容であり、その結果は仮定の域を出ないが、大阪労山技術委員会:谷関氏の推論と同じであったと考察されます。

今後は、どのような条件であればどのような結果が出るのか?を検討課題にし、クライマーの安全の一助になればとの思いで、活動して行きたいと思っています。

最後になりましたが、検証場所の提供及び検証会のアドバイザーとして参加いただきました、大阪府勤労者山岳連盟の皆様、また遠くから電話でアドバイス頂いた群馬県山岳連盟の皆様に厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

以上

 

 

 




流動分散

1本のスリングをA,Bの両支点にセットし、上側(手前)スリングを半回転してひねりカラビナをかけ、両支点に荷重を分散させる方法。

  荷重方向が変わってもパワーポイントのカラビナが移動し、荷重を分散できる。(注:大きな荷重が掛かった状態では分散出来ない時もある)

・片方の支点が破壊しても、もう一方の支点で止まるが、スリングの長さだけパワ―ポイントが落下するので、残った支点に大きな荷重が掛かってしまう。

 

比較表 1〜3    (別紙 セッテイング模式図参照)

 

 

固定分散

流動分散にてA、B両支点スリングにたるみが発生しないようにした後、パワー

―ポイント部でオーバーハンドノット(又はフイギュアエイトノット)をする

ことにより片方の支点が破壊してもパワーポイントの落下を微小におさえ、残る

支点に大きな力が発生しないように考慮した方法。

・荷重方向が変わると一方のスリングにたるみが発生し、一つの支点のみに荷重が掛かってしまう。

 

比較表4〜6     (別紙 セッテイング模式図参照)

 

 

独立分散

一つの支点に一つのスリングを使用し、荷重を分散する方法。

・荷重方向が変わると一方のスリングにたるみが発生し、一つの支点のみに荷重が掛かってしまう。


⇒結果グラフ.PDF

画像はクリックで拡大

 

C:\Users\user\Pictures\2010-04-19\088.JPG C:\Users\user\Pictures\2010-04-19\106.JPG  C:\Users\user\Pictures\2010-04-19\110.JPG 

 ロードセル2台使用           破断用ロープはビニロン3o    流動分散

(切断荷重60kg)を二重で                    

巻く。

 

 C:\Users\user\Pictures\2010-04-19\116.JPG  

  固定分散               独立分散            固定分散(縛り止め)(1)

  120cmダイニーマ・ソウンスリング   ダイニーマ・ソウンスリング   ダイニーマ・ソウンスリング(60cm)

  をオーバーハンドノットで縛る。    2本使用。           で縛る。

 

  

 

C:\Users\user\Pictures\2010-04-19\121.JPG C:\Users\user\Pictures\2010-04-19\128.JPG C:\Users\user\Pictures\2010-04-19\132.JPG 

  固定分散(縛り止め)(2)      固定分散(縛り止め)(3)     メインロープ(9mm)による

縛り方が緩いと片側に滑ってしまう。 ソウンスリングは一部溶解する。 インラインフイギュアエイトノット




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