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13.11.23



11月16日(土) 山本正嘉講演会 於:西区/大阪科学技術センター401


 11月16日(土)恒例の「安全登山の集い」を開催しました。
今年は「体力不足が登山事故を招く」をテーマに鹿屋体育大学の山本正嘉教授に以下のテーマでお話しして頂きました。

  1. 日頃からの体力づくり
  2. 故障を防ぐ
  3. 登山中の元気を保つ
  4. 自分の実力を知る方法

 今まで常識のように言われていたトレーニング方法の間違いや本当の意味での登山の為のトレーニング方法など興味深いお話しを伺う事が出来、会場満席約140名の参加者の皆さん、
あくる日からさっそくスクワット、腹筋運動に励んでおられる事でしょう。
これを機に参加して頂いた方々だけでなく多くの登山者が日頃から的確なトレーニングを行い、遭難事故が少しでも減るよう願うと共に我々もこれからも少しでも皆さんの手助けが出来ればと思っています。

遭難対策委員長 石田 英行


■「体力不足が登山事故を招く」
現代の登山者に見られる体力の弱点とトレーニングの盲点とは?
鹿屋体育大学 山本 正嘉教授i 

講演会の要旨をまとめました。

[登山は健康面でよい効果がある]
・中高年登山者を対象にした調査によると、登山を始めてから健康面でよくなった人は約70%。

 悪くなった人は約10%でその大半が膝痛、腰痛。
・登山が健康によいのは、運動強度+長時間継続という特性があること。

 上手に行えば体力増進、健康改善、精神的充足感など得るものが大きいが、疲れて不快なだけでなく、故障や事故につながることもある。

[登山事故は体力不足から起こることが多いと考えられる]
・登山事故の内容を見てみると、転滑落・転倒が60%を占めているが、これは脚力不足が主な原因と考えられる。
 病気によるものは心肺機能の不足?

・中高年登山者(リーダー層・平均年齢59才)を対象とした調査によると、脚筋力は20代並み、腹筋力は30代後半レベル、バランス力・柔軟性は40代後半レベルで、同世代の一般人と比べると圧倒的に強いが、山で通用するのは一般コース(行動時間5〜6時間、累積標高差500〜1000m程度)まで。健脚コース(行動時間7時間以上、累積標高差1000m以上)では何らかの問題が発生している。

・多くの人が「登山のためのトレーニング」をやってはいるが、「役に立っていない」
→平地でウォーキングをしても、負荷が弱すぎる
→階段登りをしても、距離が短すぎる(駅の階段で約5〜6mにすぎない)
 ※一般人が「健康のため」にやるレベルでは山では通用しない。
  「登山仕様」が必要。

・関西ガイド協会が提唱する「六甲タイムトライアル」トレーニング+体力テスト
 阪急芦屋川駅から、風吹岩・雨ヶ峠・本庄橋跡経由で六甲最高峰まで、全力ではなく無理なく歩いて
 2時間30分以内 Aランク/夏のバリエーション、雪山も問題なく登れる
 3時間以内 Bランク/北アルプスの一般ルートなら問題なく登れる
 3時間30分以内 Cランク/低山ハイキングなら問題ない
 3時間31分以上 Dランク/山を登るためにはもう少し体力が必要
※「六甲タイムトライアル」の成績を決定づけていた要因を調べると、年齢・性別・登山経験はあまり関係がなく、年間登山日数と強い関連があった。
 つまり低山でもよいので年間30回以上(2週間に1回以上)を目指す。年齢に関係なく、やればやるだけ強くなる。

[「登山仕様のトレーニング」とは?]
・目指す山をはっきりさせ、その山を登るのと同等の負荷をかける。
→行動時間、歩行距離、登高&下降距離、荷物の重さに相当する運動量

・「標準コースタイムで余裕を持って歩ける・1時間当たり標高差300mを余裕を持って歩ける(休憩込み)」程度が登山をするための「最低体力」。
 健脚コースを目指すなら「標準コースタイムの8割程度で余裕を持って歩ける・1時間当たり標高差400mを余裕を持って歩ける(休憩込み)」レベル。ほかにも、15kgを余裕を持って背負える、8時間程度は余裕を持って歩ける、等。

[登山能力を向上させるには?]
・脚筋力、腹筋力が高い人ほど早くラクに歩ける→これらを鍛える
※深いスクワット10回×3セット、上体起こし10回×3セットができない人、できても筋肉痛になる人は「転倒予備軍」。
 週3回程度、慣れたら15回×5セットに増やす。→これがラクにできれば、北アルプスもラクに歩ける

・普段のトレーニングは、山によく行く人は少なくてよいが、あまり行かない人は充分に。
 1週間単位でメリハリをつける。
※山に行った次の日は積極的疲労回復のために軽い運動、週に2回は休養とし、日によって強弱をつける。
 同じメニューばかり行わず、複数のプログラムをミックスする。

[登山中のエネルギーと水分の補給について]
・一般的な登山コースを標準タイムで歩く場合、
 エネルギー消費量(kcal)=体重(kg)×行動時間(h)×5
 脱水量(ml)      =体重(kg)×行動時間(h)×5
※体重50kgの人なら、1時間当たり250kcalのエネルギーと250ccの水を消費する。
 おおむねその70%の補給を目安に。
 (2時間で500mlボトルの約7割、おむすび2個程度)

・水分補給は少なくとも1時間に1回、カロリー補給は2時間に1回は行い、3時間以上の登山では塩分の補給も必要。

・登山事故は、11時台と14時台に多く発生している。
 食事時間などを考えると、水分・エネルギーの欠乏が原因とも考えられる。

[低体温症と高山病]
・トムラウシ大量遭難事故の場合、気温6℃前後、風速15〜18m程度、雨から霧雨という気象条件だった。
 夏でも北アルプスなどでは、とくに珍しい状況ではない。

・しかし、このくらいの風速だと、歩行に必要な体力やエネルギーは2倍以上、風冷効果で体感温度はマイナス10℃以下。
 ずぶ濡れの状態であれば、1〜3時間で通常の人は死亡する。

・濡れないようにする、暖かい衣服を着る、カロリーを摂取するなど「行動的(文化的)適応」が必要。
 最良の適応は「このような日に行動をしない」こと。

・標高1500〜2400mは「準高山」で、通常の人では高山病にはならないが、心肺機能が弱い人、高所に弱い人、体調不良の場合などでは起こる可能性がある。

・2500m以上は「高所」であり、高山病の発生は目立って多い。

・重要なのは日中に到達した高度ではなく、睡眠時の高度。

[まとめ]
・日常的には、筋力トレーニングに最重点を置く。
※スクワット、上体起こしなどを週2〜3回行えば、登山中の疲労軽減、膝痛、腰痛の予防改善に役立つ

・近郊の低山でトレーニング登山を行う。
※最低でも2週間に1回、本番前に最低3回。コースタイムより少し早く歩くことを意識し、本番同様の負荷(荷物、長距離など)も時々経験しておく。エネルギーと水分の補給もリハーサル的に上記目安量を意識して行う。

・登山後は、毎回自分の弱点をチェックし、トラブルを解決するためのトレーニングを考えて実施。
 次の山行で問題点が解決されたかをチェック。PDCAの繰り返しが重要。

報告:根岸真理

極にゃみ的日常 
http://nyami-nyami.cocolog-nifty.com/gokunyami/2013/11/2013-ad15.html


 安全登山の集い「体力不足が登山事故を招く」を聴いて
講師の山本正嘉氏は、トレーニング科学の第一人者。三浦雄一郎氏エベレスト登頂のトレーニングサポートを務めた方としても有名です。
 さて山岳事故の61%は「転ぶ事故」。これらは、日頃からの体づくりによって防ぐことが可能。特に勧めておられたのが、『筋トレ』と近郊低山での『トレーニング山行』。それぞれ負荷をかけ継続して行うことが重要で、腰痛や膝痛の予防・改善にも繋がるという。また同時に、自分の弱点を知り改善の様子をチェックする事も効果を高めるコツとか。
故障を防ぐとともに登山中の元気を保つ。念願の縦走や登攀を夢描くだけではなく、山行に合った体力を備える。当たり前のようだが、毎日ホロ酔いでは夢も叶うまい。大きな気づきを得る、良い機会となりました。


パーソナルメンバー佐伯典昭


〈配布資料〉体力不足が事故を招く

 

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