毎年秋に山岳関係の著名な方を招き、安全登山への意識を高める講演会「安全登山の集い」。今年は、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド、中央アルプス地区遭対協救助隊員などを務める小川さゆり氏をお招きし、2014年9月27日に噴火した御嶽山に遭遇、その生還から得た貴重な体験と気付きをお話いただきました。
- 期日:実施日:11月11日(土)18:30~21:00
- 場所:大阪市東成区民センター
- 担当:技術遭難対策委員会
- 講師:小川さゆり氏
- 日本山岳ガイド協会認定登山ガイド、南信州山岳ガイド協会、中央アルプス地区遭対協救助隊員など
- 演題:御嶽山噴火 火山災害に遭遇して~噴火の恐怖と登山者がもつべき意識~
- 案内サイト:https://sangaku-osaka.com/information/10365/
「小川さんの話が聞きたい。」会場で集まった何人もの方が、そう口にしていました。恒例の安全登山の集いだからではない。「生還できたからからこそ伺える、安全登山に欠かせない教訓。」そのような思いだったのではないでしょうか。
会場にいる誰もが、2014年9月27日の御嶽山噴火を今でもはっきりと覚えています。
講話は、御嶽山噴火当時の話から始まりました。突如として始まった噴火と、その中で小川さんがとった行動。なぜ生きて帰って来られたのか。命を守るために取った判断と行動について、当時の状況と併せてお話いただきました。
当時、私は凄まじい噴火の様子をテレビで繰り返し見ていました。その中に自分が立っていたら・・・。自分に置き換えながらお話を聞きました。
今回のテーマは、「登山者がもつべき意識」です。
小川さんがどうして生きて帰ることができたのか。「“運”という言葉で片づけたら、学ぶものはなくなってしまう。」そうおっしゃっていました。
正常性バイアス(逃げ遅れの心理)にならないためにはどうしたらいいのか、参加者は小川さんの体験を基に考えました。
登山者ひとりひとりが危機意識を持つこと。
周りに判断を委ねず、自分で自分の身の安全を守ること。即、自分の命を守る行動をとれたかどうかが生死を分けるのではないか、参加者は小川さんと共に当時を振り返りながら考えました。
講話の中で「安全に登山するには何が必要か」と問いかけられました。参加者からは、知識・判断・経験・体力・装備といった意見が出ました。
私自身は、“想像力”ではないかと考えました。今の自分が山に向かうことで、自分の身にどういうことが起こるのか。どういう装備や行動が必要か、想像力が欠けていることが山岳遭難につながるのではないか・・・。
じっくりと時間をかけて会場全体で考える時間をくださったので、参加者同士の言葉を紡ぎ合わせ、それぞれが自分の意見をもっていたのではないかと感じました。
私たちが気になっていた小川さんの答えは、「リスクの共有」でした。リーダーだけが分かっていても、他の人に伝わっていなければいけない。
「山には危険があるが、最も危険なのは危険を意識しない登山者自身である。」小川さんの強い言葉で講話は締めくくられました。
今回の「安全登山の集い」に参加して、私たちは、危機意識をもち、100%安全はない自然に踏み込まなければならないのだと改めて感じました。自分の命を守るのは自分自身であるという認識の上で考えを深めることができた、とても充実した時間でした。
レポート:中尾悦子(広報委員会)