様々な要因により森林生態系が衰退している大台ケ原は現在、国立公園の意義や、生物多様性保全の観点から、環境省を中心として100年先を見据えた自然再生に取り組んでいます。
今回は、国立公園管理官とともに日出ヶ岳や正木嶺などの東大台一帯を歩き、自然再生に理解を深めるとともに、環境保全への気づきを得る機会としました。
当日は生憎の雨で気温も低く寒い一日でしたが、大蛇グラに着く頃には晴れ間も見え、東大台一帯の自然と、自然再生に向けた取り組みについて国立公園管理官から丁寧な説明を受け、とても有意義な一日となりました。
大台ヶ原は、奈良県と三重県の県境にある標高1695.1mの山であり、日本百名山、日本百景、日本の秘境100選にも選ばれている関西屈指の自然スポットとして現代にその貴重な姿を残しています。
江戸の末期、大峰山に入山していた修験道の一部は、その東に広がる広大な森に神秘を感じ、霊場の新天地として修業の場とし始めました。明治以降に登山道の開設により探検家などの入山が始まり大正期には製紙パルプの原料としてトウヒ林の伐採と木材の搬出路が形成され、貴重な自然が開発の脅威にさらされる時代がありました。
その豊かな自然を守るための保護活動により、昭和11年にこの地域を含む吉野熊野地区が国立公園化に指定されました。その後も、昭和34年の伊勢湾台風や有料道路の開通による入山者の増加、ニホンジカの食害など環境変化に対し、森の姿を保つための多くの施策や環境教育等で植生を守り続け、その効果が一部に現れて来ています。
この雲に浮かぶ豊かな自然を理解し、末永く受け継いで行くことが私たち登山を愛好する者たちの使命であると思います。これを機に自然再生に理解を深めるとともに、環境保全への気づきを得る機会なれば幸いです。多くの方のご参加をお願いいたします。
自然環境委員会委員長 田中昭男