一人でも多くの方が安全に楽しく「山」を楽しめると願いを込めて、減遭難活動始まりました。
金剛山系における減遭難活動、きっかけは当地を所轄する大阪府の方に「金剛山系の事故マップを作り、遭難事故抑止に活用できないか?」と問題提起したのが始まりでした。当初は金剛山系でそんなに事故は起きていないだろうというほどの気持ちでしたが、関係機関への取材を通じて、死亡事故を始め毎年多くの方が事故に遭われている事が分かりました。
また(公社)日本山岳・スポーツクライミング協会でも、遭難対策委員会が中心となり「減遭難」活動が動き出していました。それに歩調を合わせる意味で大阪府と協議を重ねた結果「金剛山安全対策推進連絡会」の設置となり、遭難メカニズムの第一人者青山千彰先生を中心とした官民一体となった減遭難活動が始まった次第です。
さて、多くの方に人気の高い金剛山には幾多もの「道」があります。しかしそのほとんどは管理者が不明であったり、地権者に知らされることなく愛好者によって登山道化されたり、また案内看板がつけられていたりしています。利用するうちに踏み固められ、道のようになっている箇所も多くあります。
ご承知のように、私達の意思に反して自然災害は毎年のように起き、山の地形は絶えず変化しています。そのような中で愛好者の方のご厚意も、自然によってもたらされる変容に責任を持ってすべてに対応できるものではありません。また管理者不明の道では、崩落の危険を内在したまま放置されているところもあります。そのような道を私達は「勝手道」と呼び、危険度の高いルートであるとの警鐘を鳴らしてまいります。
自分の判断で山歩きができる上級者の方は、地形や天候など自然の状況を考慮しながら山を楽しめるでしょうが、山登りを始めたばかりの初心者や、まだ経験の少ない初級者の方が多く楽しまれるこのエリアでは、「案内看板」や「しっかりした踏み後」だけでは危険であるかないかの判断がつかず、ましてや絶えず変容する自然の中では遭難を招く可能性が高まります。実際、遭難事故に遭われているのは、勝手道での転倒・滑落が多数を占めます。
決してルートを塞ぐことが目的ではありません。このような活動に反論される方もおられることでしょう。また、もっと良い方法もあるかと存じます。現在、市町村、消防、警察、地元山岳会のご協力によって遭難事故場所や特徴のデータベース化を進めています。同時に、最適な表示とはどういうものか、どのように設置すれば良いかなどの研究も進めています。
まずは、大阪府が管理する伏見林道(念仏坂)から山上に至るルートから始めましたが、すべての方の安全登山に役立つよう、今後隣接県山岳連盟を含めた官民一体となり、協力しながら進めて行く所存ですので、どうかご理解のほどお願いいたします。
(一社)大阪府山岳連盟 専務理事 石田英行
(公社)日本山岳・スポーツクライミング協会 遭難対策委員会副委員長
日本山岳SAR研究機構(IMSAR)副理事長・事務局長