2022年、六甲山系の登山口にあたるハイカーに開放されていた公共トイレが、一部の方による心ない利用によって止む無く閉鎖されるという事態を受けて、登山者のトイレに関する意識調査を行いました。
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- 期 間:2022年12月23日~2023年6月30日
- 告知方法:金剛山山頂広場2か所のポスター掲示、HPやソーシャルメディアなどによる告知
- 集計方法:大阪府山岳連盟HPによるWEB定量調査
- 回答者数:129名(男性54名、女性72名、性別不回答3名)
- 回答方式:無記名、単一選択型、複合選択型
- 回答性向:意識の高い方からの回答が多いと思われ、設問によっては回答の偏りを見込む必要がある
- (問1-1)登山口にトイレが[ある]山行の入山に際し、最後はどのトイレを利用しますか?(複数回答)
- (問1-2)登山口にトイレが[ない]山行の入山に際し、最後はどのトイレを利用しますか?(複数回答)
- (問2-1)登山口にトイレが[ある]山行を下山した際、まずどのトイレを利用しますか?(複数回答)
- (問2-2)登山口にトイレが[ない]山行の下山した際、まずどのトイレを利用しますか?(複数回答)
- 問1~2
- 登山口にトイレがある場合は、入山時90%、下山時88%の方が利用しており、登山口トイレに大きな負荷がかかっている
- 性別による偏りはなく、男女同じ傾向をしてしている
- 登山口にトイレがない場合は、駐車場トイレの他、公共交通機関のトイレ、コンビニトイレを利用する方が大幅に増え、分散利用が伺える
- 登山口にトイレがない場合は、入山時、下山時とも山道脇で済ませる方が男女とも大幅に増え、マナーが悪化する。
(問3)初めて行く場所では、事前に登山口でのトイレ有無を確認しますか?(一択)
A.同行者に関わらず確認する(全体74%、男性69%、女性78%)
B.同行者によっては確認する(全体16%、男性24%、女性11%)
C.同行者に関わらず確認しない(全体10%、男性7%、女性11%)
D.それ以外(すべて0%)
(問4)初めて行く場所では、事前に道中でのトイレ有無を確認しますか?(一択)
A.同行者に関わらず確認する(全体71%、男性65%、女性75%)
B.同行者によっては確認する(全体16%、男性20%、女性13%)
C.同行者に関わらず確認しない(全体13%、男性15%、女性13%)
D.その他(すべて0%)
- 問3~4
- 同行者(の年齢・性別・経験)に関わらず、計画時点でトイレ有無への関心が非常に高い
- 事前に必ず確認する方は女性の方が多く、男性よりも関心が高い
- 同行者(の年齢・性別・経験)によって事前確認する方は男性が多く、同行者の年齢、性別、経験によって関心が変わると推察できる
- 確認しない方(13人)は、中級者・上級者(10人)に多い(属性「経験」とのクロス集計による)
- 確認しない方(13人)は、計画を立てるリーダー(9人)に多い(属性「山行スタイル」とのクロス集計による)
(問5)登山口や山上でのトイレを利用する際、汚さないよう気を付けますか?(一択)
A.どのような場合でも気を付けて汚さない(男性33人:女性67人)
B.気を付けているが汚れる場合がたまにある(男性18人:女性5人)
C.気を付けているが汚れることが多い
D.既に汚れているところでは気を付けない
E.どのような場合でも気を付けない
F.それ以外
(問6)登山口や登山道にあるトイレの維持財源についてどのように考えますか?(一択)
A.利用者が利用ごとに負担する(男性37人:女性51人)
B.登山者が利用の有無にかかわらず負担する(男性12人:女性9人)
C.設置・提供者(個人など)が負担する
D.所轄官庁・自治体が負担する
E.入山するしないに関わらず募金を集める
F.その他
- 問5~6
- 全体に意識は高いが、女性の方がより気遣いがある
- 87%の方が利用者の負担を考えている
(属性)
1n=10代
2n=20代
3n=30代
4n=40代
5n=50代
6n=60代
7n=70代
8n=80代
性別
M=男性
F=女性
N=無回答
A.始めたばかり
B.初級者・初心者
C.中級者・中堅者
D.上級者・ベテラン
A.いつもリーダーとして計画を立てている
B.リーダーとして計画することが多い
C.グループだが誰がリーダーということはない
D.グループで引率されることが多い
E.単独行が多い
<総括>
鷲林寺のトイレ問題に端を発した「山のトイレ問題*」。もちろんトイレ問題は山だけでなく、公園の公共トイレやコンビニトイレなど、街中でも使用者のマナーが絶えず問われています。ただ、我々岳人は、自然の恵みを享受するためにトイレのない自然環境に足を踏み入れるという点で、街中でのマナー以上にこの課題に向き合わなければなりません。
今回の登山口におけるトイレ利用のアンケート調査で、山のトイレ問題の本質や、多角的に考えなければならない課題に迫るにはまだまだ足りませんが、少なくとも以下のことが推察されます。
- 山行を計画する時点で、目的地のトイレ有無への関心が非常に高く、利用率も高いことから、登山口のトイレは有用。
- ただ半面、登山口トイレに大きな負荷がかかっており、人気のある山ほど維持費がかかり運営者の負担が増える。
- 登山口にトイレがない場合は、登山口に着くまでの機関で分散利用がされているが、同時に山道脇など自然環境下での用足しが増え、環境保全上の問題が高まる。
- トイレの美化に気を配り、トイレ維持費については利用者が負担するのが適当と考えている方が非常に多い。
上記を踏まえ、登山口や登山道のトイレ設置に向けた活動を模索すると同時に、登山者の利用料負担、登山者自身による美化推進など、まず私たちのマナーによって解決できる身近な問題から取り組んでいければと考えます。今後皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
自然環境委員会